大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所八王子支部 昭和60年(家イ)1642号 審判

申立人 マイケルアールホフマン

相手方 リサホフマンこと高田理沙

主文

申立人と相手方を離婚する。

当事者間の長女バーバラ・レイ(・)ホフマン(昭和59年5月10日生)の親権者を相手方と定める。

理由

1  申立人代理人は主文第1項同旨及び「当事者間の長女バーバラ・レイ・ホフマン(昭和59年5月10日生)の親権者を申立人と定める」との調停を求め、申立ての実情として「申立人と相手方は、昭和58年頃、日本において知り合い、同年6月7月東京都昭島市長宛婚姻届をもつて婚姻し、同昭島市内において同棲し、その間に、同59年5月10日長女バーバラ・レイ・ホフマンを儲けた夫婦であるところ、申立人は、生活費を得るため、同年3月31日アメリカ合衆国軍隊に入隊して、単身渡米したが、その後、相手方は、申立人の同居要求にもかかわらず、日本から永久に離れないと主張して、同居を拒みつづけ、いわゆる横田基地周辺のバーに勤務し、他の男性と情交関係を持つなどしている。従つて、相手方の所為は、民法770条1項1号、2号所定の事由に該当するので、申立人は相手方との離婚を求め、上記のような生活を継続する相手方は、親権者として適切でないから、親権者を申立人と定める旨の調停を求める。」旨述べた。

2  本件につき、調停委員会の調停を試みたところ、相手方は離婚には合意したものの、長女の親権者については、相手方と定めることを求めて譲らず、申立人は、アメリカ合衆国軍隊の命令でドイツ連邦共和国に派遣されていて調停期日に出頭不能の状態にあり、調停は不成立になつた。

3  申立人代理人及び相手方に対する各審問の結果並びに本件一件記録を総合すると、申立の実情並びに当事者間の長女バーバラ・レイ・ホフマンは、相手方がその母の協力を得ながら、日本人として監護養育をしていること並びに申立人は同長女を自ら養育することが不能であることが認められる。

4  以上認定の事実によれば、相手方の所為は、民法770条1項1号、2号所定の事由に該当し、長女バーバラ・レイ・ホフマンの親権者を相手方と定めるのが相当であるところ、本件の準拠法を検討すると、法例16条、27条3項によれば、アメリカ合衆国サウス・カロライナ州の法律になるが、同国の各州においては、当該離婚裁判のなされる法廷地の法律が準拠法になり、結局、本件は、法例29条により、日本民法が適用されることになるので、調停の経過に鑑み、本件は、家事審判法24条の調停に代わる審判として、主文同旨の審判をするのが相当である。

5  よつて、当裁判所は、当調停委員会を組織する家事調停委員樋口淳雄及び佐野照子の各意見を聴いて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 多田周弘)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例